風土病流行の法則

1)風土病流行の法則

 世界各地には、その土地に特有な風土病と呼ばれる感染症が流行しています。日本や欧米諸国などではその数が少なくなってきましたが、アジア、アフリカ、中南米の発展途上国では、今でも数多く存在し、健康上の大きな脅威になっています。
 こうした風土病の流行は、その地域の気候に影響されることが多く、熱帯や亜熱帯気候では飲食物からかかる消化器感染症(細菌性赤痢、コレラ、腸チフスなど)、蚊に媒介される感染症(デング熱、マラリアなど)が多く見られます。とくに、蚊やマダニに媒介される感染症は、媒介動物の生息できる気候か否かが流行状況に大きく影響し、地域性が顕著になります。
 また、風土病の流行状況はその国の衛生状態にも左右され、発展途上国で多いことの、大きな原因になっています。このため、発展途上国でも衛生状態が改善されてくると、風土病は次第に減少していきます。
 風土病の流行には季節性もあります。熱帯や亜熱帯の国には雨季と乾季があり、蚊媒介感染症は雨季に多くなります。温帯の国では四季があり、夏には食中毒などの消化器感染症が、冬にはインフルエンザなどの呼吸器感染症が拡大します。
 以上紹介したのは、一般的な風土病の流行状況ですが、その国の文化、地形、気候などによっても、流行状況は変化します。この章では、こうした風土病の流行に影響を与える様々な要因について解説します。

表 世界の風土的感染症の概要
感染経路 感染症 主な流行地域
経口感染 細菌性赤痢、コレラ,腸チフス、
A型肝炎、旅行者下痢症
アジア、アフリカ、中南米
ポリオ 南アジア,赤道付近のアフリカ
節足動物媒介 デング熱 東南アジア,南アジア,中南米
マラリア アジア、アフリカ、
中南米(特に赤道付近のアフリカ)
黄熱 赤道付近のアフリカと南米
日本脳炎 アジア
ダニ媒介脳炎 ロシア、ヨーロッパ
重症熱性血小板減少症候群 東アジア
性行為感染 梅毒,HIV感染症 世界全域
B型肝炎 アジア,アフリカ,南米
動物媒介感染 狂犬病 アジア、アフリカ、中南米
飛沫・空気 インフルエンザ、COVID-19 世界全域
結核 アジア、アフリカ、中南米
経皮・傷口 レプトスピラ症 アジア、アフリカ、中南米
住血吸虫症 東南アジア、中東、アフリカ,中南米
破傷風 世界全域